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  • もっとアイスクライミングがしたい
     
  • 経緯を振り返る
     
  • 今回大会をレポートする
     
  • さてオープンの予選
     
  • スピード競技
     
  • 二日目、オープン準決勝・決勝
     
  • リメイクの後の決勝

  •       (三和 史朗 記)



     
     
     

     

    「もっとアイスクライミングがしたいです」
    「ドライパート8割ぐらいがいいです」選手のニーズは多様だ。
      黎明期を過ぎた日本の(北海道の)ミックスクライミングは、今や過渡期に入っていると言っていい。いくつか確認しておこう。
      氷だけを登るアイスクライミング。ぶら下がったつららを登るために岩から取り付くミックスクライミング。つまり、ミックスとは岩と氷が混ざっているという意味である。  だから、氷の部分をアイスパート。パネルと人工ホールドで作られたところをドライパートと呼び、一つのルートに両方が混在しているものをミックスルートという。
     
    今回、運営側がこだわったのは、何のためにコンペをやるのかという初心である。
    1. 外国、特に欧米で盛んになりつつある、アイスのコンペを日本でも行いたい→技術向上
    2. なかなかフィールドが無く、またトレーニングの場も少ないミックスクライミングを簡単に体験できる場が欲しい→啓蒙普及


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    経緯を振り返る。
    何も分からない我々は、 雑誌の記事と、実際にシャモニの大会に参加した保科雅則氏と同行した山崎康史氏のアドバイスと、その時の記録ビデオを手がかりに、何とか第一回の大会を行うことができた。
      その大会ではるばる、ヨーロッパから来て頂いたサロモンチームの二人により、また様々なアドバイスを頂いた。2回目に来られた時のコメントは、「数年前のヨーロッパのコンペのスタイルだ」とのこと。これは決して否定的な言い方ではなく、そうして追いついてきて欲しいという期待である。何しろ、0から比べれば飛躍的な進歩である。
      そして、1回2回のチャンピオン小田が、スイスの世界選手権に参加。三和が同行。我々は世界規模の大会のスケールを目の当たりにすると同時に、サーカスライクなステージに(すくなくとも私は)いささか疑問も感じた。確かにフェスティバル的なイベントではあるが、いかに本物に近くするか。そして、より困難な設定をするか。ステージデザインの試行錯誤が続いた。大会を実際に見た一般観光客は何をしているのか分かるものの、それ以外の時間帯に来た人たちから、コンパネを段ボール扱いされ、まだ制作中との誤解を受け、主催者側とのジレンマを調整し、今回無事4回目を迎えることができた。今回は、いかに生ミックスに近づけるか。いかに氷を沢山登らせつつ難しくできるか。そのコンセプトを見事に結実した会場ができあがったのである。現場の氷職人の業(コンペ用の氷づくりという意味で)は完全に熟成した。

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    今回大会をレポートする。

      まず、3回までで分かったことの一つに、男女間のみならず、男子間の実力差があまりに激しいと言うこと。一部のハイレベルなクライマーのためだけのコンペであってはいけない。エントリー層にも楽しんで参加してもらえるような大会にするにはどうしたらいいだろう。ということで、ファンクラスを設定した。参加条件は過去の大会において予選敗退をしていること。5人と6人がエントリー(男子2名は急病につき欠席)
     
      予選3課題、決勝1課題で、土曜日に行われた。会場の氷はどこもかしこもかぶっているが、そのなかでも緩いところをついての氷ラインが2本。ミックスラインが各一本。

      女子はゲバ表通り阿部陽子の全完登。本州から参戦した横山めぐみが2完登で続いた。   男子はミックスラインがあまりにエグく、全完登は無し。せっかくなので、全員が決勝に進んでもらうことにする。オープン予選のあと、決勝。男子は出だしから手でホールドを持たせる、マニアックな課題。トップロープのオンサイト方式なので、そこに気づくかどうかが勝敗の分かれ目となった。予選1位で通過した真下誠二は、まさかのスリップ。清純派同盟の田戸岡直樹が優勝をもぎ取った。
     
      女子は氷から始まり、中間にドライを交えた易しめのルート。ここでも阿部が実力を発揮し、唯一の完登を決め文句なしの優勝。
     

      選手が競技中にどんどん上手になっていくのが、目に見えてわかる。それだけでも、このクラスを設定した甲斐があったというものだ

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    さてオープンの予選。

      女子5名と男子はシード選手を除く12名がエントリー。女子のルートはファンクラス男子の予選と兼ねた。
     
      注目は前回大会で初出場し、火がついたチーム84の本田真理。年末年始にカナダで公然の闇修行を経て、前の週の赤岳鉱泉で男子と一緒に登らされるほどの実力をひっさげて、2本完登。同列で皆勤賞の森宗るみ子。
      5人1グループでのセッションは和気藹々と大会とクライミングそのものを楽しんでくれたようだった。全員、翌日の準決勝進出。
     
     
      次に男子。女子のようには甘くない。かぶりのややきつい氷1本。ミックス2本。人数から行って、女子のように全員準決勝にはすすめないのは明白。しのぎを削ったクライミングが展開された。氷ルートは、ほとんどが一撃。勝負はMラインにもつれるが、セッターの暴走はファンから始まっており、こちらも同様。誰も完登できずに、K点で6人が準決勝に駒をすすめた。

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    夜はアトラクションのスピード競技。

      今回は一人ずつ登り、タイム順で決勝を行う方式を採用した。これは、二人同時に登るコースを作成するのは非常に大変なことで、また接触による事故の可能性もあり、シンプルなスタイルにした。結果これが功を奏し、あふれかえる参観者の前でとても楽しいパフォーマンスが繰り広げられた。優勝は、ロシアチームの作成したスピード用アックスをカナダでゲットした本田真理。男子は僅差でファン優勝の田戸岡直樹が藤本幸夫を破って豪華賞品を手に入れた。花火もあがりイベント的には最高に盛り上がった。


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    日はあけて二日目、
    オープン準決勝・決勝
      準決勝は各2課題を3時間の中でセッション方式であらそう。 ここからは、まぎれもなく強いシード選手が加わることになり、セッターも気合いが入る。
      女子は男子予選と共通の氷のライン。もう一つはファン女子の予選のラインを少し難しくしたミックス。本田真理はさっくり1撃して1抜け。
     
      そうそうにホテルに戻って休憩。残った4人が執拗にトライをする。インターバルをとりつつ、最後の30分で手塚歩未が2課題目も完登。森宗るみ子の3人が決勝に進出した。
     
      男子は、???というルート。ハングのもっともきつい氷から始まり、もろいシャンデリアンアイスの垂壁を抜け壁上部を大きくトラバース。そこからクライムダウンし、最後はその間を登っていく渦巻きのようなルート。制限時間6分をフルに使ってぎりぎりという、セッター保科雅則渾身の作。
      もう一本はキング小田のボルダーライクな強烈な一手を要求するミックスルート。
      シード選手から登場させて、下位選手の参考にと考えたのだが、1便目で石井、鳴海がシャンデリアで撃沈。三樹は時間切れ。選手達に暗雲がたちこめるも、昨日のスピードで僅差で負けた藤本が、ここは得意のパターンを発揮。それでも時間ぎりぎりで一撃。続く奈良も一撃。むしろ、下位選手のほうに一撃ラッシュで、焦りが入ったのはシード選手達であった。セッター陣のアドレナリンは相当分泌されたに違いない。そういった意味で、セッターは別なタイプのジャンキーである。なんだかんだで最終的には全員が完登。
      問題は2本目。ルーふぬけ口のホールドから、氷に開けられた穴にデッド気味にとばす引きつけムーブ。この核心で勝敗が分かれた。穴に入れば、あとは登れる。結局入らなかった3名と。入ったがさすがに力尽きた富樫貞吾の4名が準決勝で涙をのんだ。

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    リメイクの後の決勝。

      女子はトップロープの易しめの課題。男子はリードのゲロエグな課題。保科・小田の全精力を注入し奥野テイストを味付けした、ウルトラルートである。
      もちろんオンサイト。女子は、やはりここも本田真理が安定した登りで唯一完登。2位は僅差で森宗るみ子が若手の手塚を押さえた。
      
      男子。いきなり股割りのムーブから、わるいドライ。氷をからめつつも、悪い向きに甘いホールド。次々と選手がクリップすることなく、プリクリップのトップロープで終了する。予選から勝ち上がってきた、吉田貢が2本クリップしての時間切れで、後半はさらに上部で勝負がわかれるかと思いきや、他も次々と下部でフォール。セッターに冷や汗が流れる。シードで準決勝全完登の4人がじゃんけんで決めた出走順最後の選手が、昨年の覇者、鳴海玄希。翌週のノルウェーのワールドカップ参戦を控え、そのはずみにして欲しい。
      
      だれもが期待しつつも不安も捨てきれない。しかし、鳴海は多くの選手が手こずった最初のムーブをきれいに決め、危なげなく上部に突入。クリップもスムーズ。途中疲れも出始めるが、ヒールを上手く使いレスト。しかし、時間が無くなる。もう完登は目の前というところまできたため、ここはあえて競技を中止にせず、途中からカウントダウンをやめた。
      リザルトとしては時間が無くなった地点をとっているが、見た目的にはやはり完登で勝負有り。優勝の2文字は揺らぐことなく、彼の手中へと落ちたのであった。優勝賞品総額8万円相当をゲットし、選手達の新たなキングとして、目標となってくれるだろう。
      
      みんな、コンペで上手くなった。コンペのためにトレーニングしている。実行委員としてはうれしい限りだ。だが、反省会の席でぽろりと出た一言。「最近銀河の滝に、人がいなくなった。アイスクライマーはどこへ行ったんだ」生岩という言葉が産まれたように、ここでも生氷、生ミックスなる言葉ができはじめている。これからの方向を模索し続ける日々は、まだ続く。
     
      そして、4月には来年の会場のデザインを完成させなくてはいけない。

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      Photo by  Yasuyuki Skurada
               Mgumi Yokoyama